三池監督ならではの底知れぬパワーがスクリーンから飛び出してきそうなド迫力純愛エンターテイメント。昭和の名曲をキャラクターのテーマソングのように散りばめ、歌って踊って、喧嘩して、血しぶきが飛ぶそんなアツい純愛をクサいぐらいまじめに演じるのだから、演じる者たちの覚悟も相当のものだろう。そして、きっと楽しかっただろう。
名門一家のお嬢様早乙女愛(武井咲)は子どもの頃雪山である少年に助けられる。少年のことを白馬の王子様と信じた愛は、高校生となったある日不良相手に一人で喧嘩を続ける太賀誠(妻夫木聡)に出会い、生まれも育ちも違う二人の運命が交錯する。
うざいとののしられても、愛する誠のために不良のたまり場、花園実業へ転向する愛と愛を心から慕う岩清水弘(斎藤工)。武井咲のお嬢様ぶりは少女漫画から飛び出てきたみたいにかわいい一方、男優陣は高校生にしてはおっさん臭い。唯一誠の最大の敵となる座王権太(伊原剛志)の自虐ギャグには思わず笑ったが。他にも安藤サクラ演じる裏番長もどきなど芸達者なツワモノに笑わされながら、昭和の荒れた学校の空気を久々に体験。今から思えばあれだけ暴力に走るパワーって大したものだな。他にも歌って踊る一青窈など意外な一面も垣間見え、ミュージカルのような楽しさいっぱい。
誠を捨てて東京で飲んだくれてはどうしようもない暮らしをしている母親とのエピソードなど、昭和のドラマによくあったよなと思わせるシーン満載。そしてツッパリながらも、最後の最後に愛への気持ちを認める誠演じる妻夫木聡の一歩間違えばヤクザみたいな高校生ぶりが気持ちよかった。観終わったあと、カラオケに行きたくなったのは私だけではないはず。昭和って、あれだけカラフルでパワフルな時代だったのか。まさに圧巻だった。