~ピーター・チャン監督が初めて挑む、サスペンスフルな武侠活劇誕生!~
今年の大阪アジアン映画祭クロージング上映では前売りが1時間で完売という記録を作った本作。きっと金城武人気だろうけど、なにせ原題は『武侠』。金城武演じる捜査官がドニー・イェン演じる強盗事件犯人を偶然倒してしまった英雄リウの真相に迫る謎解きだけではなく、後半20分壮絶かつ必見の武侠対決が立ちはだかるのだ。
ピーター・チャン監督初の武侠映画、今までにはないようなものを目指しただけあり、リウが過去の事情を封印し、新しい家族を守り生きていく姿と、その過去にこそ重大な秘密が隠されていると確信した捜査官の静かなる攻防が物語の軸となる。時代設定も1917年自然豊かな雲南省の村と、中国ならではの生活文化が息づき、人々が貧しいながらも家族を大事にしていた頃の様子を見事に再現。アンティーク調の映像に、胎内細胞がビジュアルで表現されるサイケな一面も重ねて斬新さを表現し、細部へのこだわりが感じられる。
普通の紙職人を貫こうとするリウを演じるドニー・イエンの静の演技が新鮮ならば、真相の究明にしか関心を持たない丸ぶち眼鏡の風変り捜査官というキャラを演じる金城武も魅力的。中国伝統の鍼技でサプライズ連発!そしてラストは言うまでもなく伝説のカンフーマスター、ジミー・ウォンの存在感と、威圧感に参りました!の世界なのだ。『ラスト・コーション』以来久々となるタン・ウェイの、秘密を抱えながらも家族として過ごす夫を支える姿も自然でよかった。
クライマックスまではやや長い道のりだが、それでも書いてみれば見どころいっぱい(笑)。殺人に手を染めた血のつながりを断ち、愛する家族との人生を歩むために生まれ変わる男の壮絶な闘いは、やはり是非スクリーンで観ていただきたいな。