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『二番目の女』キャロル・ライ監督インタビュー

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第7回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門出品作品、香港映画祭上映作品となったキャロル・ライ監督の『二番目の女』。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2002で審査員特別賞を受賞した『金魚のしずく』、日本で劇場公開されたカリーナ・ラム、リゥ・イエ主演の『恋の風景』と女性監督ならではの繊細な描写に定評があるキャロル・ライ監督の最新作が海外初公開され、大いに会場を沸かせた。

双子の美人姉妹と二人が愛してしまった男をめぐるラブサスペンスを、現実と劇中劇を交錯させながら美しくもミステリアスに描いた本作。一人二役に加え、舞台劇でも二役をこなしたアジアンビューティー、スー・チーの熱演や、舞台劇もこなしシリアスな演技を披露したショーン・ユーの新しい魅力を堪能できる作品だ。

第7回大阪アジアン映画祭および香港映画祭のゲストとして来阪したキャロル・ライ監督に本作の着想や、香港映画界の今について話を伺った。


 

━━━本作の着想はどこから得たのか。
私には双子の友達がいるのですが、お互いの友達が間違えるので、最終的に二人とも間違えられても「そうよ。」と答えるようにしているという話を聞いたのです。その状況が面白いと思い、本作の構想が浮かんできました。

劇中劇を取り入れたのも、舞台の話と現実の話の二つがあって、舞台のストーリーが二人の状況に繋がっているので両者を融合させました。女優が何かを「演じる」ということが主題にもなっています。

━━━劇中劇は元々ある作品なのか。
『再世紅梅記』という越劇(広東オペラ)で、香港人なら誰でも知っている有名な作品です。古典作品なので、せりふ回しを現代風にアレンジし、北京語に変えています。

━━━スー・チーの一人二役ぶりが見事だが、出演するにあたってのエピソードは?
脚本を見せた時点で面白そうだと思ってもらえました。山口百恵が双子の姉妹を演じた『古都』(80市川崑監督作品)をスー・チーさんに見せ、こんな感じで演じてみてはどうかと打診したところ快諾してもらいました。

━━━どのようにして双子姉妹のキャラクターを作っていったのか。
もともと細かく姉妹の設定をしていました。姉は優しい性格で妹を大事にしているし、妹は奔放で野心が強い。スー・チーさんはトップクラスの女優で理解力も高いので、設定を読み込んでご自身でキャラクターをしっかり作り込んでいきました。

━━━ラブストーリーでのショーン・ユーのシリアスな演技が新鮮だったが、
ショーン・ユーさんは見た目は現代的ですが、時代劇にもマッチするルックスです。本作では時代物の劇中劇を披露するので、時代物の装束をつけてもかっこいい彼を起用しました。

━━━ 一貫してモノトーンな姉妹や劇中劇の衣装が印象的だが、衣装、美術に関するこだわりは?
本作では美術、衣装にもこだわっています。衣装担当には「シンプルで、かつ華麗な感じ」と指示をしました。キーカラーを赤、黒、ゴールド、白の4色に決め、そこからあまり離れることのないようにしました。

基本的には無地の衣装が多いですが、冒頭で姉が着用する花柄のワンピースが登場します。水中シーンにも使われているのですが、ここでは水の中でも写りのいいワンピースを衣装担当がわざわざ選んでくれました。


━━━今の香港映画界はどんな動きになっているのか。
今の香港映画界は大陸と合作の作品ばかりになっています。香港だけで作っている作品はほとんどない状況です。ジョニー・トー監督やイー・トンシン監督もしかりですが、香港市場が小さくなっているので、合作でないと成り立たないのです。また、大陸では審査があるので、どうしてもそれに合わせた描き方になってしまいます。

━━━大陸ではどんな映画が望まれているのか。
私もまだ模索中です。『2番目の女』は香港に先駆けて大陸で公開したので、すでにネットで評判が出回っており、高尚な趣味の方には受け入れられているようです。大陸の観客の大半は、まだ映画を見る水準が一定のところまで達していません。香港人だと音がいい、映像がきれいといった部分まで見ますが、大陸の人はまだストーリーとセリフに重きを置いていると思っています。

━━━最後に本作で監督が描きたかったことは?
女性の微妙な心理を描いています。そして常に誰かと比較してしまうような、人間としての微妙な心理を描いているのです。