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『神さまがくれた娘』A.L.ヴィジャイ監督、ヴィクラム氏インタビュー

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観客とのディスカッションに引き続き、A.L.ヴィジャイ監督、ヴィクラム氏に二人が一緒に映画を作ることになったきっかけや、クリシュナの人物像をどうやって作り上げていったのか、さらにインタビューで話を伺った。


━━━ヴィクラムさんとA.L.ヴィジャイ監督が一緒に仕事をすることになったきっかけは?
監督:ヴィクラムさんは超多忙な人気俳優なのですが、3年前、ヴィクラムさんに時間ができたとき、すかさず「あなたがこの映画をやらないなら、私は監督を辞めます。」と強引にオファーしました。素晴らしい役者でないと撮れない映画です。電話でヴィクラムさんから「やりますよ。」と言われたときは奇跡が起こったと思いました。本当に夢が叶いました。

ヴィクラム:ヴィジャイ監督は、映画としてはこれで4本目なのですが、南インドの若手の中では一番実力がある監督です。彼の映画は映像がとても素敵だし、彼自身がとても純粋なので、作品の純粋さは彼のキャラクターからもきているんです。彼の前の作品を見て「若いのにすごいな。」と思っていたので、オファーが来たとき是非一緒にやりたいと思いました。一つ一つが大人っぽいニュアンスのある映像を盛り込まれた作品が作れるのは彼しかいないです。ヴィジャイ監督の次回作も是非やらせてくださいと言いました。役者が一人の監督とずっと組んで仕事をするのは微妙に難しいところがあり、普段はやらないのですが、彼の腕を信じているから、今も二人で撮影しています。


━━━ヴィクラムさんはA.L.ヴィジャイ監督をかなり評価しているようだが。
ヴィクラム:彼の作品はそれぞれ全然違います。アクションも撮れば、真面目なものも撮りますし、本作のような映画も撮っています。3本目の映画は時代劇でした。時代劇を撮るのはとても難しいのですが、2ヶ月で撮影し、それが成功したというのも彼の実力を示していると思います。

━━━主人公クリシュナは心底ピュアな人物に仕上がっているか、これは監督のアイデアか、それともヴィクラムさんのアイデアか。
ヴィクラム:ほかにも優秀な監督はいますが、彼らにはこの作品は撮れません。心の底からイノセントでないとこの作品は撮れないんです。小雀のエピソードや、信号が赤になるまで何があっても絶対に待っているとか、これらは本当に監督そのものです。絶対に間違いを犯さない。社会的に全てを考えた上で行動を起こす人なのです。

監督:クリシュナというキャラクターのアイデアはあったけれど、どうやって撮ったらいいのか分からなかったんです。どんな感じで、どういうジェスチャーでクリシュナを演じてもらうかも分からなかった。そんな中、ヴィクラムさん自身がこれらの宿題をもって様々な知的障害者のセンターを訪ねたりしながら、クリシュナの動きを全部自分で作り上げてきたのです。ヴィクラムが初めてクリシュナとしてシーンに出てきたときは、びっくりしました。自分が思い描いていたようなキャラクターそのものだったのです。

 ヴィクラムさんがそうやってクリシュナを演じることで、重ねて次を考えられるようになりました。最初の10日間は私もパニック状態で、セリフをどうしようか迷っていたのです。でもヴィクラム自身がアドリブを言う場面(冒頭の女性弁護士と会話するシーン)を聞いた上で、私もセリフを考えたりしていきました。まさに二人で作ったクリシュナ像ですね。

━━━父と娘の間に流れる愛が本当にうまく描かれているが。
監督:ニラ役のサラちゃんも、私が撮れたのは50%だけで、残りの50%はキャメラの後ろで起こっていたことなんです。ヴィクラムさんは自分の演技だけでなく、サラにもたくさんのことを教えてあげていました。キャメラの後ろで父親役のヴィクラムとたくさんコミュニケーションをとったからこそ、あんな素晴らしいニラを演じることができたんです。本当の父と娘の気持ちになって二人がキャメラの前に現れていました。

━━━本作では、インドの保護者法についても若干触れているが。
監督:障害のレベルによってですが、親権について訴えられたら、最終的には法廷で決められてしまいます。クリシュナもチョコレート工場で働いてはいますが、教えられたことはできても、少し違うと対応できなくなってしまいます。この状態で親権を持つのは難しいのが現状です。

━━━今のインド映画業界はどんな動きが起こっているのか。
監督:インド映画といっても、いろいろな言語で作られているので、民族や習慣に近づいて映画を撮っています。全体でインド映画は年間800本以上作られています。インディー語やタミル語など様々な言語で作られており、技術的にもハリウッドには負けていません。タミル語の映画は内容がインディー語圏の映画よりも深いので、インディー語圏でタミル語映画のリメイクをされることもあります。インド映画産業全体でみても、すぐれた映画音楽家や監督やキャメラマンは、結構タミル語圏から生まれているんですよ。


インド映画界きっての名優ヴィクラム氏がその才能を認める若手注目株のA.L.ヴィジャイ監督とのまさに二人三脚で誕生した『神さまがくれた娘』。本作を経てさらに次回作へと映画を生み出すお二人が、映画のことを通じてお互いの素晴らしい点を次々と挙げる姿に、心底信頼し合っている様子が伺えた。日本語で「おおきに!」と挨拶するなど、サービス精神旺盛ながらもスターの貫録を見せつけたヴィクラム氏の来阪に、グランプリ受賞が大きな華を添えたことは言うまでもない。そして、インドから生まれた新しいゴールデンコンビの次なる作品にも大いに期待したい。